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今月のPickUpコラム

子どもの「できるかもしれない」を育てる

──さんぽ学園代表 日高麻琳さんが描く、地域と企業で支える中高生の居場所──

幼児教育から大学受験まで、一貫した学びを提供する「浜学園」。その大学受験部門である沖縄受験ゼミナールのトレン・デインジャフィールド校長による連載がスタートしました。変化の激しい時代において、子どもたちに本当に必要な学びとは何か。そのヒントを、現場の視点からお届けしていきます。

教室のテーブルに並んで座る日高麻琳さんとトレン校長

(左)さんぽ学園 日高麻琳さん(右)沖縄受験ゼミナール トレン デインジャフィールド校長

沖縄市諸見里で中高生を対象とした子どもの居場所「さんぽ学園」を運営する日高麻琳さん。沖縄大学 こども文化学科で学んでいた日高さんは在学中から起業準備を始め、卒業後すぐに比屋根にて活動をスタート。その後諸見里に移転し、学習支援、日常の見守り、学校内での支援、地域との交流を通じて、子どもたちが自分らしく未来へ進める環境づくりに取り組んでいます。

トレン校長は、日高さんのSNS発信をきっかけに活動を知り、企業として応援をすることに。今回の「トレンたぬきの皮算用」で、日高さんがさんぽ学園という名前に込めた思い、学校教育だけでは拾い切れない子どもたちの声、支援を持続可能な「仕事」として成立させる必要性について話を伺いました。

ジュクタン(以下ジ)「まず、さんぽ学園とはどのような活動をおこなっているのでしょうか」

日高「沖縄市諸見里で中高生をターゲットとした子どもの居場所を運営しています。放課後に安心して過ごせる空間を提供するだけでなく、学習支援、個別の見守り、子どもたちとの対話、食事に関する支援などをおこなっています。」

ジ「さんぽ学園という名称には、どのような想いが込められていますか?」

日高「子どもたちが自分らしく、自分自身の道を歩んでいけるようにという想いを込めてこの名前をつけました。私は今、学校現場もよく見て回るのですが、『自分には出来ない』とか『やってもどうせ身につかない』と、自分を低く見積もっている子どもが多いように感じています。今、学校や家庭だけでは抱えきれない悩みを持つ子どもが増えています。だから子ども一人ひとりの状況やペースに向き合って『失敗してももう一度挑戦したらいいよ』と伝えながら、前に進む力を支えたいと思っています」

ジ「トレン先生と日高さんの出会いのきっかけを教えていただけますか?」

トレン校長(以下敬称略)「きっかけはインスタです。沖ゼミでは今SNS委員会を立ち上げてSNSを強化中なのですが、たまたま目に入ったリール動画ですごい元気な若者が画面に向かって早口で熱く語っていたのです。何この人?と3回連続で観たら沖縄の話で、しかも諸見里。沖ゼミ沖縄校のすぐ近くで活動していると興味を持ちました。私が一番魅力に感じたのは、恵まれない子どもを支援する活動を職業にしようとしていたこと。このような活動は、税金による助成金や補助金だけでボランティア運営することが殆どなので助成金などが打ち切られたら破綻します。そうして数年で閉鎖に追い込まれる団体が多い中、民間企業とコラボしたり支援を受けながら完全に自主運営するという方針を打ち出していたので感銘を受けて沖ゼミでも何か出来ないかとすぐにこちらから連絡を入れました」

日高「自主運営と言ってもちっちゃな他の事業から補填しながらなんとかかんとかやっている状態です。沖縄市内の企業様からお米やそうめんなどの物資をいただくことがあるのですが、それをそのまま子どもにあげるわけにもいかないので、それらを使って食事を作ってあげていました。そのうちに『今日は俺がつくってみようかな』などと言い出す子が出てきて、今ではみんなで作っています。フライパンを振る様子も様になっていますよ」

トレン「子ども達がただ座って食事を提供されるのを待つのではなく、『自分で作ってみようかな』と言い出すような空気を作れるのが日高さんなんですよね。子どもたちにただ食事を作って食べさせるのではなく、一緒に作って一緒に食べることで人間を育てる。本当に心を育みたいという想いが伝わります」

さんぽ学園の日高麻琳さん
さんぽ学園 日高麻琳さん

ジ「さんぽ学園は、中高生が対象とのことですが、なぜ小学生は対象から外れているのでしょうか」

日高「小学生を対象とする居場所や支援の場は比較的多いのですが、ある程度自分のことは自分で出来る中高生の支援は手薄になりがちなんです。あと、中高生が小学生もいる支援の場に行くと、周囲から小さい子のお世話をするお兄ちゃんお姉ちゃんとして振る舞うことが期待されて、自分自身と向き合う時間が持ちにくくなるのです。思春期は、将来のこと、自分の得意なこと、やりたいことなどについて考えて試行錯誤する時期なんです。小学生との交流は大切なことですが、支援の軸は中高生に置いています」

ジ「学習支援はどのようにおこなっていますか?」

日高「単に宿題を見たり、勉強を教えたりするのではなく個別伴走を重視しています。学び残しが多い子は、学校で勉強に躓いた時に先生や友達には恥ずかしく思って質問できないことがあります。だから、心理的に安全な環境の中で一歩ずつ進めるような環境を作ることを重視しているんです。勉強への抵抗感が強い子にはボードゲームなど遊びの要素を取り入れて足し算などに自然に触れられるよう工夫しています。勉強が嫌いな子が『少しならやってみようかな』『勉強も悪くないかもしれないな』と思えるようなきっかけを作ることを大切にしています」

ジ「学校現場にも出向くとのことですが、子どもの居場所に留まらず、学校へ出向く理由は何でしょうか」

日高「いくら居場所を作っても、ただ待っているだけでは誰も来てくれません。中高生にとって、知らない場所に一人で足を運ぶのはとてもハードルが高いことなので、こっちから出向いて何度も顔を合わせて関係を築いてから『困ったらいつでも来てね』と伝えるようにしています。私は今、沖縄市の山内中で、教室から飛び出してしまう子どもへの声かけや、教室内で学習に集中しにくい子どもの見守りをしています。教室の中で静かに座って授業を聞いているように見える子でも何も情報が入ってきていない子は見ていれば分かるし、タブレットの誘惑に負けて別の事を始めてしまう子も大勢います。先生は気づいていても、一人で生徒40人近くの生徒をコントロールするのは無理なこと。今は山内中だけですが、地域の人材や学生ボランティアが多くの学校に関わることで、教員が子どもに向き合う余力を持てる可能性が生まれ、結果的に子どもの成長にも良い影響を与えると考えています」

トレン「日高さんは24歳という若さでそういったことにも気づけて動くことが出来る。それってとてもすごいことなのです。私たち沖ゼミでは、塾に通える生徒の面倒を見て利益を得ているわけですが、沖縄と貧困問題はとても深い関係にあることは感じています。日高さんのような活動を応援することは地域貢献になります。日高さんの活動を沖ゼミだけでなくもっと多くの県内企業の方に応援してもらいたいのです。企業は利益が出なければなかなか動き出すことはありませんが、地域貢献をしていると、就職活動をしている学生が『いい会社だな』と魅力を感じてくれるかもしれない。今は優秀な人材が多く眠っているのに採用で困っている会社も多いでしょう。就活していても魅力を感じられる企業でなければ応募しないで、アルバイトで良いやとなってしまうからです。会社が魅力的になれば、いい人材が集まってくると信じて我々は地域貢献に取り組んでいます」

沖縄受験ゼミナールのトレン デインジャフィールド校長
沖縄受験ゼミナール トレン デインジャフィールド校長

日高「企業様からの支援は、資金や物資だけでなく子どもたちの職業観を広げるきっかけにもしたいと思います。支援いただく企業を知ることで、子ども達は将来の進路や働き方を具体的に想像しやすくなりますし、企業側にとっては子どもたちと接点を持つことで、未来の人材や地域との信頼関係を育てる機会になるのではと思っています。だから子どもたちの居場所を守るために、企業様が協力しやすい形を模索しています。資金、物資、職業体験、イベント協力、子どもたちとの交流など、関わり方は一つではありません。だからこそ、企業様にとって何が一歩を踏み出すきっかけになるのか提案をいただくとすごくありがたいです。」

ジ「イベントを企画しているとか?」

日高「子どもたちが『何かに挑戦したい』と話し合うなかで、地域の人が集えるフェスを開催したいという構想が生まれています。しかも沖縄アリーナで開催したいとのこと。県内のアーティストを呼んで音楽とスリーオンスリーのバスケットボール大会を組みあせて面白いことができないかと考えているようです。もちろん、すぐにそんな大規模なイベントを開催出来るわけはないので、約1年後の開催を視野に入れながら、まずは企業へのスポンサー協力の依頼やTシャツ制作に取り組んでいます。また、その前段階として小規模なクリスマスフェスを実施予定です。子どもたちは当初、『自分たちが楽しめる場をつくりたい』と考えていましたが、話し合いを重ねるうちに視野が広がり『来てくれた子が食事を買えない苦しい想いをしないようにしたい』と、他者に目を向けるようになっています。さんぽ学園はまだ活動年数が浅く、長期的な成果はこれからですが、子どもが安心して通い続けること、そして支えられた子どもが次の子どもを支えるという、すでに重要な変化が表れてきていることを実感しています」

#トレンたぬきの皮算用#沖縄受験ゼミナール#さんぽ学園#居場所づくり#地域と企業

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