【調査レポート】AI検索の普及が、教育・受験の情報収集に与える影響
公開されている調査データと、ジュクタンの独自調査をもとに、AI検索の普及が保護者・受験生の情報収集にどんな変化をもたらしているかを整理しました。塾・学校・教育関係者の皆さまに向けた調査レポートです。
要旨
- 検索は減っていないが、サイトが開かれにくくなっている。 米国ではGoogle検索の68%がクリックなしで終了している。Ahrefsの推計では、AI による概要が表示されるキーワードで、検索1位のクリック率が58%低い。クリック数やサイト訪問数だけでは、成果を測れない時代に入った。
- 日本でも、生成AIを使う人が1年で過半数に達した。 利用率は2025年の27〜38%から、2026年には51〜60%へ。主な用途は「調べもの・情報収集」。小5〜高3の子をもつ保護者の約半数が、子どもが勉強・宿題に生成AIを使っていると回答している。ジュクタンの独自調査(n=32)では、高校生のAI利用は勉強が中心で、進路相談は2割にとどまる。
- 2027〜28年に、AIが情報収集の主な入口になる可能性がある。 編集部の試算では、利用率は2027年に約7割、2028年に8割前後に達する。いまの小中学生とその保護者は、AIで調べることが一般的な環境で受験を迎える可能性が高い。
課題1 検索は減っていない。減っているのは、サイトへのクリック。
米国では、検索してもどのサイトも開かずに終わる割合が上昇を続けています。SparkToroは、その主な要因を、検索結果の上部にAIが答えをまとめて表示する「AI による概要(AI Overviews)」とみています。
Ahrefsの分析では、AI による概要が表示されるキーワードの検索1位のクリック率は、表示されない場合の推計値と比べて、2025年4月公表時は34.5%、2026年2月公表時は58%低くなっていました[2]。SparkToroの集計では、クリックなしで終わる検索は2019年の49%から2026年1〜4月の68%に増えました。SparkToroは、直近2年の上昇を過去10年で最も速いとしています[1]。
「検索量が減る」という予測は、現時点では当たっていない
2024年2月、Gartnerは「2026年までに従来型の検索エンジンの検索量が25%減る」と予測しました[3]。しかしGoogleは、2025年10〜12月期の検索の利用が「これまでで最も多かった」と説明しています[4]。検索の総量は減っていません。変わりつつあるのは、答えをAIの画面の中で読み、サイトを開かずに済ませる行動です。
クリック数やサイト訪問数だけでは、成果を測れない時代に入った。
情報がAIの回答の中で読まれる場合、利用者に届いていても、クリックや訪問としては記録されません。これまでの指標だけで評価すると、届いている情報を「効果がない」と誤って判断するおそれがあります。
課題2 日本でも、生成AIを使う人が1年で過半数になった。
異なる2つの全国調査が、いずれも1年で20ポイント超の上昇を示しています。教育の場面でも利用は広がっています。
高校生を対象とした調査(2026年3月、n=104)では、96.2%が生成AIの利用経験を持ち、41.0%が勉強で「検索ツールの代わり」に使うと回答しました[10]。回答者が少ないため、参考値です。
Googleの検索に、AIとの対話機能が組み込まれつつある
- 2025年9月、Google検索の「AI モード」(対話型のAI検索)の日本語での提供が始まった[8]。
- 2026年5月、GoogleはAI モードの月間利用者が全世界で10億人を超えたと発表した。関心のあるテーマを監視して変化を知らせる「情報エージェント」を、有料プランの加入者向けに提供することも発表している[9]。
- ビデオリサーチの調査では、生成AIの主な用途は「調べもの・情報収集」である[7]。
勉強の道具としては定着、進路はこれから
ジュクタンが高校生に行った調査(2026年9月、n=32)では、91%(32人中29人)が受験・勉強・進路についてAIに相談したことがあると答えました。使い道は「勉強中の質問」83%、「問題の解説」76%が上位で、「進路相談」は21%、「志望校探し」は14%にとどまります。一方、AIに相談したことがある29人のうち21%(6人)は、AIから大学や学校を提案された経験がありました[13]。回答者が少なく無作為抽出でもないため、参考値です。
見通し 2027〜28年に、AIが情報収集の主な入口になる可能性がある。
利用率の伸びが鈍化しながら続くと仮定すると、2027年に約7割、2028年に8割前後に達します(編集部の試算)。編集部は、米国で先行しているクリック減少が、日本では1〜2年遅れて表れるとみています。
なお、ここでの利用率は、調べものに占めるAIの割合そのものではありません。「主な入口になる」は、利用率の伸びと、主な用途が「調べもの・情報収集」であること[7]からの編集部の解釈です。
表1 時期別の想定シナリオ(編集部の見立て)
| 時期 | 想定シナリオ(編集部の見立て) | 受験・学校選びの情報収集への影響(想定) |
|---|---|---|
| 2026年 | 検索結果の上部に、AI による概要が定着する | 日程・制度などの調べものから、クリックが減りはじめる |
| 2027年 | 利用率が約7割に(試算)。AI モードが日常の入口になりはじめる | 保護者や受験生が、学校・塾の候補をAIとの対話で絞りはじめる |
| 2028年 | 利用率が8割前後(試算)。「まずAIに聞く」が定着する | AIの回答に挙がらない情報源は、比較の候補に入りにくくなる |
| 2029年〜 | AIが情報の監視や比較を手伝う機能が広がる | 比較検討の作業の一部を、AIが担うようになる |
結論 評価の物差しを、「クリック」から「AIに選ばれること」へ広げる。
保護者や受験生は今後も調べ続けますが、その答えはAIが選んだ情報源を通じて届く場面が増えます。塾・学校の情報発信は、AIに一次情報として選ばれるかどうかで、届き方が変わる可能性が高いと考えます。
1. 保護者・受験生の問いに、一次情報で答える
Googleは今後のウェブ戦略の基本として、ユニークな価値のある内容を最優先すること、クロールやインデックス登録がしやすいページ設計を挙げています[5]。模試データや教育の現場から得た知見など、その塾・学校にしかない情報を、保護者や受験生の問いに答える形で公開しておくことが基本となります。
2. 早めに、情報の蓄積をはじめる
AIは、ネット上に公開された情報から答えを探します。図6の中学入試の例のとおり、いまの小学生とその保護者の多くは、AIが主な入口になると想定される時期に受験を迎えます。早めに公開をはじめておくことが、その時期に備える現実的な手段となります。
3. 成果の測り方を、あわせて見直す
AIの画面の中で読まれた情報は、クリックとして記録されません。サイト訪問数に加えて、AIの回答に名前が挙がる頻度、塾名・学校名での検索数、入塾・出願時の「何で知ったか」の回答などを継続して追う必要があります。なお、Googleも、クリック数そのものより、利用者が目的を達成できたかを評価するよう提唱しています[5]。
試算の方法
図5の2027年以降の値は、次の手順による編集部の試算です。実測値は、各調査とも2025年と2026年の2時点しかありません。
- 2026年の前年比の増加幅を出す(モバイル社会研究所 +24ポイント、ビデオリサーチ +22ポイント)。ビデオリサーチの2026年値は速報値のため、確報で変わる場合は試算も見直します。
- 普及が進むほど伸びは鈍るため、増加幅が毎年、前年の一定割合に縮むと仮定する。この割合を「伸びの持続率」と呼びます(0.6なら、増加幅が前年の6割になる)。この仮定は上限を置いていないため、2028年より先に延ばすことはできません。試算は2年先までの目安に限ります。
- 持続率を0.6〜0.7とし、2つの調査それぞれに当てはめる。図5の帯は、調査ごとにこの範囲の試算値を示しています。
2つの調査は、対象年齢・調査時期・「利用」の定義が異なるため、利用率の水準をそのまま比べることはできません。図5で2本の帯の高さが違うのは、主にこの調査の違いによるもので、統計的な誤差の範囲(信頼区間)ではありません。
表2 試算の内訳(伸びの持続率ごとの生成AI利用率)
| 持続率 | 位置づけ | 2027年調査(モバイル社会研究所/ビデオリサーチ) | 2028年調査(モバイル社会研究所/ビデオリサーチ) |
|---|---|---|---|
| 0.5 | 参考(低位) | 63% / 71% | 69% / 77% |
| 0.6 | 採用 | 65% / 73% | 74% / 81% |
| 0.7 | 採用 | 68% / 75% | 80% / 86% |
| 0.8 | 参考(高位) | 70% / 78% | 86% / 92% |
※小数点以下を四捨五入。各調査の実施月(モバイル社会研究所は2月、ビデオリサーチは4〜6月)時点の値です。数値は仮定から機械的に計算した値で、1ポイント単位の精度があるわけではありません。
持続率は、編集部の判断で0.6〜0.7としました。参考として、スマートフォンの世帯保有率(総務省「通信利用動向調査」)は、約5割に達した翌年に増加幅が約0.65倍に縮み(2012年+20.2ポイント→2013年+13.1ポイント)、9割に達したのは2022年でした[12]。ただし、その後の伸びは不規則で(2014年は+1.6ポイント)、一つの目安として示しています。0.8以上では、2028年にビデオリサーチの値が9割を超え、この先例と比べて速すぎると考えました。0.5以下では、2027年の伸びが+11〜12ポイントと、直近1年(+22〜24ポイント)の半分にとどまります。こちらは低めの見方として参考に示しています。なお、世帯の「保有」と個人の「利用」は指標が異なるため、この先例は目安にとどまります。
この試算は、各調査2時点のデータと仮定にもとづく目安で、予測の範囲を保証するものではありません。2027年の実測値がこの範囲の外になることも十分ありえます。実測値と照合できるよう、前提と計算方法を公開しています。
留意点
- 試算の前提と限界は、上の「試算の方法」に記載しています。日本の「クリックなしの検索」の割合は公開データがなく、時期の見立ては米国からの類推です。
- 米国でも、2026年1〜4月にAI モードまで進んだ検索は全体の0.34%にとどまります[1]。移行の速度は、Googleの方針や広告事業の判断によって変わりえます。
参考資料
- SparkToro「In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click」2026年6月8日(Similarweb、米国、2026年1〜4月)[業界企業の分析]
- Ahrefs「AI Overviews Reduce Clicks」2026年2月4日公開(30万キーワード)、前回分析は2025年4月17日公開[業界企業の分析]
- Gartner「Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026」2024年2月19日[調査会社の予測]
- Alphabet「2025年第4四半期 決算説明会」2026年2月4日[企業の公式発表]
- Google 日本向け説明会、2026年2月10日(Web担当者Forum、2026年2月17日)[専門メディアの取材記事]
- NTTドコモ モバイル社会研究所「2026年4月6日発表」(2026年2月調査、15〜69歳、n=7,223)[企業研究所の調査]
- ビデオリサーチ ひと研究所「ACR/ex 生成AI利用率」2026年9月10日発表(12〜69歳、2026年は速報値)[調査会社の調査]
- Google Japan Blog「Google 検索における『AI モード』を日本語で提供開始」2025年9月9日[企業の公式発表]
- Google Blog「A new era for AI Search」2026年5月19日[企業の公式発表]
- 塾選(DeltaX)「高校生の生成AI活用に関する意識調査」2026年6月17日発表(2026年3月30〜31日、n=104)[企業のPR調査]
- 明光ネットワークジャパン「子どもの学びの変化に関する実態調査」2026年7月6日発表(2026年6月19〜23日、n=1,000)[企業のPR調査]
- 総務省「通信利用動向調査」(令和元年版 情報通信白書 図表3-2-1-1/令和4年調査の結果、2023年5月29日発表)[国の統計]
- ジュクタン編集部「JYUKUTAN YOUTH RESEARCH 01 受験、もうAIに相談してる?」2026年9月11〜30日(Webアンケート・匿名、高校生 n=32、2026年10月21日時点の速報)[ジュクタンの独自調査]