ジュクタン Special 対談
空を読み、未来を考える──気象予報と教育が育む「判断する力」
アクシス沖縄責任者 根間幸大さん × 気象予報士 池宮城サキさん
気候変動による猛暑や豪雨、受験制度や学び方の変化、そしてインターネットやAIによる情報環境の変化、私達はこれまで以上に過去のデータから1つの正解を求めるということができなくなり、自ら判断する力を求められる時代になっています。今回の対談では、気象予報士と教育者、それぞれの視点を交わしながら、先の見えにくい時代に、子どもたちがどのように学び、未来に備えていけばよいのかを考えます。


個別指導Axis沖縄県責任者
根間 幸大さん
個別指導Axis首里校の責任者を経て、現在アクシス沖縄全体責任者を務める。

気象予報士・防災士
池宮城 サキさん
琉球大学理学部海洋自然科学科卒
2021年に気象予報士の資格を取り、現在QAB琉球朝日放送の「CATCHY」の気象キャスターとして活躍中。
変化する気象と教育「予測しきれない」時代に向き合う
池宮城さんが気象予報士を目指したきっかけをおしえてください。
池宮城 最初のきっかけは大学時代で塾講師をしていた時、天気の分野を教えるのがとても苦手だったことです。低気圧や高気圧など自分では理解していても生徒に分かりやすく説明することが出来ない。それで学び直しをしているうちに気象の面白さに惹かれていきました。ただ、実際に気象予報士になったのは、一度別分野に就職し、子どもを生んでからのこと。気象情報は生活や命を守る情報なので、子どもが大きくなった時に自分の身を守れるようになって欲しいという想いから気象予報士試験に挑戦することを決めました。子育てをしながら9回の受験でようやく合格。途中何度も挫けそうになりましたが、勉強の進捗や試験に落ちたことなど全てSNSに発信することでモチベーションを保っていました。
近年の気象と、受験・教育の現場でどのような変化を感じていますか?
池宮城 千葉で発生した豪雨もそうですが、近年は予測しきれない天気が増えていますね。線状降水帯など温暖化の影響がある中で、地球に大きな変化が起こっている段階なのだなと感じています。沖縄は海に囲まれているのでそこまで極端な気温の変化はないですが、本州では最高気温が35度を超える「猛暑日」はもう珍しくはなく、今年からは40度を超える「酷暑日」という気象用語が採用されています。今年は温暖化に加えて、太平洋の海面水温が高くなるエルニーニョ現象も発生し、平年よりも気温が高い傾向にあります。
根間 教育の現場における一番の変化は、テストの答えが一つではなくなったことですね。昔は一問一答式で正解をひとつ選ぶ形式でしたが、今は文章を読んで自分の考えを書き記したり、複数の情報を組み合わせて考える力を求められるようになっています。数学の問題であっても、理科や社会に関する文章を読み解き、どの方程式を使うかなど自分で考える。暗記や一夜漬けではどうにもならないものばかりになっています。定期テストの形式も変わっていて、中間テストは無くなり、単元テストと期末テストで評価がされます。期末テストのみとなるため、テストまでの期間が長く学んだ事が定着しているかの判断が難しくなっています。
気象予報と教育には、どのような共通点があると感じますか?
池宮城 気象予報には、まず現在の状態を正確に把握することが大切です。地上や上空での観測、衛星画像による雲、地表面温度、水蒸気量の確認など、多様なデータを用いて現状を把握した上で物理学の方程式を使ってコンピューターで予測しています。その結果を基に、国家資格を持つ私たちが判断して修正や補足した情報を発信しています。私たちは「暑くなります」「雨が降ります」など一方的に情報を与える側ですが、情報の受け取り手は理解をしてそこから行動に繋げることが大切です。そこで先ほど根間さんの言っていた「考える力」が必要になります。今は様々なところから発信される天気情報がニュースやネットで見られる時代。フェイクニュースを含めて情報が錯綜する中、何が正しくて何が大事なのかを自分で判断して、行動へ繋げる力を子どもの頃から学んで欲しいです。
根間 教育の場も同じ様に生徒の現状を通知表、単元テスト、模擬試験など、あらゆるデータを確認して判断します。ただ、同じ評価でも学校ごとに判断基準や傾向が異なるため、数字だけで判断することができません。例えばアクシス首里校なら、那覇の端にあるので那覇だけでなく、西原や南風原、浦添などの生徒がいますが、那覇と西原では同じ評価でも学力に大きな差があったりします。内申が重要な県立高校の入試では逆に有利に働いたりもするので必ずしも悪いという訳ではありませんが、数字にとらわれず生徒と対話しながら本人の理解度を確認していく事がとても大切です。また、今はYouTube等で様々な学習動画を観て学ぶことが出来ますが、再生回数が多いからといっても、その解説が正しいとは限りません。内容を理解しないまま「有名な○○が言っているから」と受け入れるのではなく、日々の学習を積み重ねて判断する力が必要です。これはAIも同じですね。ChatGPTを活用する際にも、何故そういう返答がきたのか、それは正しいのか自分で考えてみてください。
予測(予報)が外れた時はどのように軌道修正しますか?
池宮城 予報が外れることは珍しくはありません。大切なのはそれを「失敗」として終わりにしないこと。歩みを止めずに新たな情報を追い続け、その都度予報を修正していくのが私たちの仕事です。
根間 学びに終わりはなく、テストや受験での失敗は成長に繋げるための大切な経験です。失敗すると、自分に足りない部分や別の見方に気づくことができるからです。だから100点ばかり取る子にもあえて難しい課題を出して思い通りにいかない経験をさせています。また、生徒は部活動や人間関係、生活リズムなどによって計画通りに動けないことがあります。だから周囲の大人が継続的に状況を確認して必要に応じて軌道修正をすることが大切です。その点個別指導塾は、お子さんの日々の変化にも気づきやすいという強みがあります。
子どもたちに天気や防災へ関心を持ってもらうためには何が必要だと思いますか?
根間 沖縄の子どもにとって、雪などと違い台風は身近な存在なので気象を学ぶ入口になっているように感じます。今年は特に台風の接近が多く休校や停電など生活への影響を受けているので関心が高まっているようです。台風の進路や強さ、備えるべき事などを伝えるいい機会となりました。
子どもたち、保護者に伝えたいことはありますか?
根間 未来は予測できません。だけど不確実さを恐れて何もしないのではなく、自分で情報を集めて、考え行動する力を身につけて欲しいです。
池宮城 私はイベントなどで、「気象情報は命を守る情報ですよ」と結構堅苦しいことを言ったりしていますが、本当に伝えたいのはもっと単純で「空って面白いよ」ということです。空って、わざわざ海とか山とかに行かなくても上を見たらいつも広がっている身近な大自然。雲の変化などに興味を持つことで気象を知り、台風などの危険に備えることにも繋がるので、ぜひ空を見上げてみてください。